飲食業界での転職を考える時、選択肢は決して一つではありません。業態を変える、職種を変える、業界内で本部・SVに上がる、異業種に転身する──それぞれに固有の難しさと、それぞれの可能性があります。本記事では、業態別・職種別の特徴、年収レンジの目安、年代別の戦略、業界内転職と異業種転身の判断軸を、実務に即した視点で整理しました。
1. 飲食業界の転職市場の今
飲食業界は、コロナ禍の影響を経て労働市場が大きく変動しました。離職率が高止まりする一方で、人手不足を背景に経験者の転職市場としては「売り手」と言える状況です。とくに業態をまたいだ移動(居酒屋からカフェ、ファミレスからファインダイニング等)と、本部スタッフ・メニュー開発などの内勤職へのキャリアチェンジが活発化しています。
同時に、業務用食材メーカーや飲食SaaSなどの飲食関連業界、つまり「飲食店を顧客とする側」への転身ルートも一般化しました。働き方改革・DX化の文脈で、現場経験者の知見が他業界からも求められています。
2. 業態別の特徴と年収帯
業態によって、求められる経験・労働時間・年収レンジは大きく異なります。次の表は転職市場で観測される一般的なレンジ感です。
| 業態 | 年収レンジ目安(店長クラス) | 特徴 |
|---|---|---|
| 個人レストラン・ファインダイニング | 350万〜550万円 | 料理の腕重視、長時間労働、独立志向の人材が集まる |
| 大手チェーン居酒屋 | 400万〜600万円 | 業績評価、SVへの昇格ルートが体系的 |
| カフェ・ベーカリー | 350万〜500万円 | 女性活躍、生活リズムが整いやすい業態が多い |
| ホテル・宴会 | 400万〜650万円 | 福利厚生が手厚く、海外展開ルートあり |
| 給食・コントラクト | 400万〜600万円 | 土日休み、ワークライフバランスを取りやすい |
| 多店舗展開チェーン本部 | 500万〜800万円 | SV・本部スタッフなど、現場以外のキャリア機会が豊富 |
年収だけでなく、休日数・労働時間・キャリアの広がりを総合的に見ることが重要です。
3. 職種別の市場価値
料理人・調理スタッフ
業界内ではジャンル(和食・フレンチ・イタリアン・中華等)の腕が市場価値を決めます。業界外への転身では、メニュー開発職・食品メーカー商品開発・料理教育などへのルートがあります。
店長
マネジメント経験・数値管理経験が評価され、業界内ではSV・本部・他業態への移動が可能です。異業種では、店舗運営型ビジネス(小売・サービス)の管理職として再評価されることも多くあります。
SV(スーパーバイザー)・エリアマネージャー
複数店舗管理経験は、本部スタッフ職や同業他社への移動で評価が高くなります。マルチサイトマネジメント経験として、小売・サービス業全般で価値があります。
本部スタッフ(販促・商品・人事・経営企画)
飲食業界本部経験は、外食産業全般で活きるほか、業界外でも「現場感覚を持った内勤人材」として一定の評価を得られます。
メニュー開発・商品企画
飲食業界の中でも専門性が高く、食品メーカー・ECフード・ミールキット企業などに移動するケースが増えています。
営業・卸関連
飲食店営業経験者は、業務用食材メーカー営業・飲食SaaS営業など、業界知識が直接活きるポジションへの転身ルートがあります。
4. 年代別の戦略
20代
異業種転身の選択肢が最も広い時期です。営業職・販売職・人事職など、未経験OKのポジションも多いため、業界外を含めた幅広い選択肢を検討できます。同時に、業界内で店長・SVへステップアップする道も現実的です。
30代
業界内では店長・SV・本部への昇格、もしくは同業態間の転職でステップアップを図る時期。異業種転身を考える場合は、店長経験以上のマネジメント経験を翻訳できる業界(小売・サービス・SaaS等)が現実的です。
40代
業界内では本部スタッフ・経営層、もしくは独立がメインルート。異業種転身は難易度が上がりますが、業界知識を活かせる業務用食材・飲食SaaS・人材紹介などの「飲食関連業界」は40代でも入りやすい傾向です。
5. 業界内転職と異業種転身の判断軸
「業界に残るか、出るか」を判断する際、以下の問いに自分なりに答えを出してみることをお勧めします。
- 料理・接客への情熱はまだあるか:あるなら業界内、消えているなら異業種を検討する材料に
- 体力的に何歳まで現場に立てるか:30代後半以降は内勤・本部職への移動を計画的に進める
- 家族との時間・生活リズムが崩れていないか:勤務時間が改善できる業態(給食・カフェ・本部)への移動は業界内でも有効
- 年収UPの上限が見えているか:業界内では一定以上の年収UPが頭打ちになる場合、業界外も視野
- 業界経験を翻訳できる別領域があるか:業務用食材・飲食SaaSなど隣接領域は転身難度が低い
6. ホキラオンエージェントの視点
ホキラオンエージェントは、飲食業界出身者の転職支援を専門領域の一つとしています。「業界に残る vs 出る」の二択に縛られず、業態を変える、職種を変える、隣接業界に出る、本部に上がるなど、複数の選択肢を並べて比較する面談を大切にしています。
飲食業界の経験は、思っている以上に幅広く再評価される資産です。ご自身では「飲食しか経験がない」と感じても、店舗運営の数値管理、スタッフマネジメント、原価管理、新店オープン経験などは、他業界からも明確な評価ポイントです。まずは経験の棚卸しから一緒に整理しましょう。
参考にした主な公的データ・出典
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(職種別・産業別の賃金水準)
- 国税庁「民間給与実態統計調査」(業界別給与の年次推移)
- 厚生労働省「一般職業紹介状況」(職業別有効求人倍率)
- 厚生労働省「雇用動向調査」(入職・離職動向)
※ 本記事の年収レンジ・市場価値・業界動向に関する記述は、上記公的統計と編集部の取材・実務知見に基づく参考値です。記載時点(2026年4月時点)の観測値であり、個別の選考結果や年収・処遇を保証するものではありません。最新の数値・条件は政府統計および求人情報をご確認ください。
本記事は実務視点の参考情報であり、具体的なキャリア相談は無料キャリア相談をご利用ください。
監修:杉本 晶也(ホキラオン株式会社 代表取締役 / ホキラオンエージェント編集長)