経理職は「企業の数字の最終管理者」として、業種・業界を問わず必要とされる職種です。日商簿記2級程度の基礎資格があれば30代で転職市場が動き、連結会計やIPO準備の経験を積むと年収600〜900万円のレンジに入る職種でもあります。本記事では、経理の階層別役割、年収レンジ、評価される経験、そしてCFOまでのキャリアパスを実務に即した視点で整理します。
1. 経理職の市場価値の今
経理は業種を問わず必要とされる職種であり、慢性的な人手不足が続いています。とくに連結会計、IPO準備、英語力のいずれかを持つ経理人材は、転職市場で常に引き合いがあります。さらにDX化の文脈で、freee・マネーフォワード・SAP等のITスキルを持つ経理は、業務改革の中核として中堅企業からの引き合いが増えています。
一方で、AI・RPAによる自動化が進む中、「単純な仕訳作業のみ」のキャリアでは年収頭打ちのリスクもあります。会計知識+業務改革+経営との対話 の三軸で価値を高めることが、これからの経理キャリアの方向性です。
2. 経理の階層別役割
経理職は、担当する業務の範囲と責任で大きく階層が分かれます。
| 階層 | 主な業務 | 必要経験の目安 |
|---|---|---|
| 一般経理(メンバークラス) | 仕訳入力、月次決算、請求書処理、経費精算 | 未経験〜3年 |
| 主任・係長クラス | 月次決算の取りまとめ、年次決算補助、税務申告補助 | 3〜7年 |
| 課長クラス | 年次決算責任、税務申告、監査対応、メンバー管理 | 7〜15年 |
| 経理部長 | 経理部門統括、開示資料作成、経営層への報告 | 15年以上 |
| CFO・管理部門責任者 | 財務戦略、資金調達、IR、経営会議参画 | 経理部長級経験+経営的視座 |
注意したいのは、企業規模によって階層と権限のスコープが大きく変わることです。中堅企業の経理部長は、大手企業の課長に近い業務範囲を担うケースもあります。
3. 年収レンジ(規模別・経験別)
転職市場で観測される一般的なレンジ感です(2024-2025年時点の市場観測に基づく目安)。
| 階層・経験 | 中小企業 | 中堅企業 | 大手・上場企業 |
|---|---|---|---|
| 一般経理(実務3年程度) | 350〜450万円 | 400〜500万円 | 450〜550万円 |
| 主任・係長クラス | 450〜550万円 | 500〜650万円 | 550〜700万円 |
| 課長クラス | 550〜700万円 | 650〜850万円 | 750〜1,000万円 |
| 経理部長クラス | 700〜900万円 | 800〜1,200万円 | 1,000〜1,500万円 |
| CFOクラス | 900〜1,500万円 | 1,200〜2,000万円 | 1,500〜3,000万円超 |
同じ役職名でも、企業規模・上場有無・連結対象会社数によって年収幅が大きく異なります。
4. 評価される経験
- 月次・年次決算の独力遂行:1人で決算を回せる経験は実務スキルの最低ライン。
- 連結会計:海外子会社の連結を含む経験はとくに高評価。中堅以上の企業で必須化しています。
- IPO準備経験:N-3〜N-1の各フェーズで経理として関わった経験は、希少価値が高く、転職市場で強い武器になります。
- 監査対応:会計士とのやり取り、内部統制(J-SOX)対応の経験。
- 会計システム導入・刷新経験:SAP、Oracle、freee、マネーフォワード等の導入・運用設計経験。
- 英語:海外子会社対応、外資系本社対応で必要。Toeic 700点以上が目安。
- 税務知識:法人税・消費税・国際税務の実務経験。
- マネジメント経験:経理部内での後輩指導・チーム運営。
5. 経理から先のキャリアパス
(1) 経理部長 → CFOへの昇格・転職
同社内、または転職して管理部門責任者へ。経理だけでなく、財務・法務・総務までを統括するポジションです。中堅企業のCFO候補は、経理部長級経験者から選抜されるケースが多くあります。
(2) 財務職への移動
経理(過去会計)から財務(資金調達・運用)へ。資金調達、金融機関対応、IR業務など、経営戦略に近い業務に移行します。中堅以降の規模で財務職の独立した募集があります。
(3) 経営企画への転身
会計知識を活かして、中期経営計画の策定、予算編成、事業ポートフォリオ管理などの経営企画職へ。経理経験者が経営企画に異動するケースは増えており、経理→経営企画→CFOというキャリアパスも一般化しています。
(4) IPO準備CFO・管理本部長
IPO準備期の中堅・スタートアップ企業から、CFO候補・管理本部長候補としての引き合いがあります。連結会計・開示・監査対応の経験者は、N-3期以降の企業で特に重宝されます。
(5) コンサルティング・会計事務所への移動
会計コンサル、IPO支援コンサル、税理士法人の事業会社支援部門など。事業会社の現場経験を活かして、複数企業を支援する立場へ。
6. 経理キャリアの落とし穴
- 同じ会社の経理に長く留まる:規模・業界・システムの引き出しが少ないまま年齢を重ねると、転職市場での評価が伸びにくくなります。
- 仕訳作業のみで職能が止まる:自動化が進む業務だけでは、AI・RPAに代替される領域に留まるリスク。
- 決算経験が浅いまま部長級まで進む:中小企業で課長・部長まで上がると、転職時に決算遂行力を再評価される際にギャップが生じることがあります。
- 会計士・税理士資格に過度に依存する:資格は基礎条件にすぎず、実務遂行力・マネジメント経験が転職市場での評価軸になります。
- 40代以降の異業種転身は難しくなる:経理は業種を問わない職種ですが、業務範囲を広げない場合、年代と連動して市場価値が頭打ちになります。
7. ホキラオンエージェントの視点
経理職のご相談で多いのは、「同じ会社で何年も経理をやっているが、市場価値が見えない」という不安です。経理は業務範囲・経験範囲を意識的に広げないと、年齢が上がっても年収が伸びにくい職種でもあります。
ホキラオンエージェントでは、経理職のキャリア相談において、現職での業務拡張余地(連結・IPO準備・システム刷新など)を整理した上で、同社内でできる経験拡張と、転職で得られる経験拡張を比較する面談を大切にしています。とくに中堅オーナー企業のCFO候補や、IPO準備期の管理本部長候補のポジションは、経理経験を最大化する転身先として有力な選択肢です。
参考にした主な公的データ・出典
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(職種別・産業別の賃金水準)
- 国税庁「民間給与実態統計調査」(業界別給与の年次推移)
- 厚生労働省「一般職業紹介状況」(職業別有効求人倍率)
- 厚生労働省「雇用動向調査」(入職・離職動向)
※ 本記事の年収レンジ・市場価値・業界動向に関する記述は、上記公的統計と編集部の取材・実務知見に基づく参考値です。記載時点(2026年4月時点)の観測値であり、個別の選考結果や年収・処遇を保証するものではありません。最新の数値・条件は政府統計および求人情報をご確認ください。
本記事は実務視点の参考情報であり、具体的なキャリア相談は無料キャリア相談をご利用ください。
監修:杉本 晶也(ホキラオン株式会社 代表取締役 / ホキラオンエージェント編集長)